2010.4.7 栃木県吟醸酒研究会で第一位!!
皆さん、こんにちは!栃木の地酒「澤姫」の杜氏・井上ひろしです。
更新がちょっと遅くなっちゃってゴメンなさいね!
蔵の方はというと…、平成21酒造年度の酒造りは無事終わりました。
とはいっても、まだまだホッとひと息つける段階ではありません。
各種コンテストへの出品や、新酒イベントなどへの参加などが続き、
蔵の掃除がなかなか進みません。
早く終わらせて納豆食べたいよ〜!
ウチでは蔵の消毒が完全に終わるまでは御法度なんですよね。納豆。
めでたく解禁となった暁には思い切って、熱々のゴハンに納豆ではなく、
納豆にゴハンかけて食べたいぐらいです。禁断症状極まってます(笑)
”challenge!”
改めて今期の酒造りを振り返ってみると、
この言葉がテーマだったように思えます。
本当に様々な挑戦をしてきたなあ。
季節商品「しぼりたて新酒」の特別純米化グレードアップに始まり、
好評のきもと純米に加えて、同じく古来伝統の天然醸造法・山廃純米
の復活醸造。味のふくらみを持たせながら軽さを持たせる様々な試み。
そして新タイプ栃木酵母の実験や県オリジナル酒造好適米の育種研究。
その他、ホント細かい事まで諸々。う〜む…我ながら色々やったなあ。
本当にあっという間の酒造期でしたよ。充実してたってことかな。
挑戦。
言葉で言うのは簡単ですが、実行するのは容易ではありません。
我々蔵人は常に考えています。挑戦の原点には何があるのか…と。
様々な試みをすることは自分にとって大きな経験となっていきますが、
従来の澤姫の持つ個性や長所などを180度転換してしまっては
意味がありません。
あくまで個々の製品の長所を理解しつつ、その良き点を殺さずに
プラスアルファの魅力を加えて行くことが僕達の挑戦の原点。
大層な理念を並べ綴っても、自分自身を見失ってはいけませんからね。
そしてお酒は嗜好品。嗜好品である以上、美味しいか美味しくないか。
魅力がある製品かそうでない製品か。突き詰めるとこの2択なんです。
決して頭でっかちな理念やコンセプトが真の魅力を押し潰してはダメ。
ん?ちょっと解りにくい説明になっちゃった?
要するに、「自分らしさ」を残しながら、
常に美味しく進化させ続けたいってことなんですよ。
これまでにも何度かご説明してきましたが、
澤姫の製造コンセプトは「真・地酒宣言」。
胸を張って全国の地酒ファンの皆様に栃木の味だと伝えていく為に、
普通酒から鑑評会出品酒まで全製品の原料米に地元・栃木産米を
100%使用しています。これは澤姫、永久不変のこだわり。
そして味の面では、名は体を表すという諺通り、
「澤」という字の持つ爽快で清々しいイメージと、
「姫」という字の持つ優しく優雅で華やかなイメージが
共存した美酒であり続けたいと考えています。
そんな想いが、ついに我々自身に究極の挑戦をさせてしまいました。
全国新酒鑑評会を始めとする今年の各種酒類コンテストに、
澤姫は100%栃木産米・栃木酵母から醸しあげた純米大吟醸で挑みます!
鑑評会。
全国各地に様々な酒造好適米が誕生しても、まだまだ酒米の王
と呼ばれる品種「山田錦」から醸した大吟醸を出品する蔵元がほとんど。
全国新酒鑑評会を例に挙げると全体の9割近くが山田錦のお酒ですね。
その中の大半が兵庫県産山田錦。
そしてアルコール添加をした香り華やかでキレ味の良い大吟醸で
競い合うのが主流、というか前提のようになっています。そんな中で、
アル添大吟醸に比べるとどうしてもやや重い酒質になりがちな
純米大吟醸、しかも100%県産米の「ひとごこち」で挑もうってんですから、
この挑戦は一見無謀に思えるかも知れません。
僕達は決して、アルコール添加するお酒に価値を見いだせなくなった
ワケではありません。ましてや純米蔵宣言をするつもりもありません。
本醸造の規定内の範疇であれば、
アルコール添加には「増量」というネガティブなイメージではなく、
香味の抽出などの様々なプラス効果がある事を
常にポジティブにとらえているつもりです。
事実、来年はアル添タイプの大吟醸での挑戦に戻るかもしれません。
今年だけ社長に蔵人のワガママを許してもらって挑戦するんです。
なんて言うか、意地なんですよ意地。そして地酒職人としてのプライド。
蔵人として、いつかは避けて通れない道だと考えていました。
本当に純米大吟醸では鑑評会に勝てないのか?
地元産米のポテンシャルを引き出した向こう側に何があるのか?
僕達はそれが見てみたい。
栃木産のこの米は
兵庫県産山田錦にも決して引けを取らないと信じていますから。
僕自身、鑑評会はゲームだと考えています。金賞を獲ったからといって
必ずしも売れ行きが良くなるワケではありません。
そこにあるのは、小さい蔵も大きい蔵も関係なく技術力を競い合う、
蔵人だけに許された、
意地とこだわりとプライドをぶつけ合う大人のゲーム。
受賞云々以上に、そこから得るものは計り知れないものがあります。
しかし誤解の無いように補足しますが、
ゲームはガチンコで勝負しに行くから楽しいんです。
所詮ゲームだから負けてもいいとか、
参加すること、挑戦することに価値があるとか、
これは入賞酒とは傾向が違うから評価されなくても仕方ないなんて姿勢で
ハナっから挑んでちゃ、
楽しむことも成長することもできないと思うんですよ。
たとえ入賞酒の傾向と違ったタイプでも、
審査員の方々、そして消費者の皆さんに力技で認めさせる位の気持ちで
行かないと。だから、やるからには本気で金賞獲りに行きます。
それが我々、澤姫蔵人の「挑戦の原点」なんですから、ね。
誕生した酒の出来には満足しています。
決して例年にヒケを取らないハズ。
オリ引き・火入れ・最終セレクト・ビン詰めも完了し出品準備は整いました。
もう僕達に出来る事は何もありません。後は信じて待つ事のみ。
成功したら大声で笑おう。たとえ失敗しても悔いはないと大声で笑おう。
一度きりの挑戦になるのかもしれないんだからこそ、
それぐらい気持ちの入った爽快な挑戦をしてやろう。
僕が僕である為に。
最後に報告。
おかげさまで栃木県の吟醸酒研究会では第一位を受賞しました。
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